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7日の日豪首脳会談では、豪州産牛肉の関税(現行38・5%)を15〜18年間で4〜5割削減することで合意した。メキシコやチリとのEPAで設定した関税30・8%を大幅に下回る水準だ。ただ、EPA発効初年は、加工用の冷凍牛肉は19万5000トン、主に家庭用の冷蔵牛肉は13万トンを超えれば、輸入急増時に関税を引き上げる「セーフガード」が発動され、関税が38・5%に引き上げられる。これは2010〜12年度の豪州産牛肉の輸入実績と同水準で、現在4割の国産牛のシェアが急激に減る可能性は低い。
畜産関係者によると、EPA発効で豪州産牛肉の小売価格は5%程度下がる可能性があるという。豪州産牛肉の価格下落で最も影響を受けるのは、ブランド化が進む高価格の「和牛」ではなく、国産牛肉の4割を占める国産乳用牛(ホルスタイン)だ。全国1・9万戸の酪農農家にとって、ホルスタインの販売収入は売り上げの約5%を占める貴重な副収入源で、経営への影響は小さくない。
一方、EPAでは豪州産チーズに対し、無税・低関税の輸入枠を最大20年で2万6100トンに拡大するほか、ブルーチーズなど一部の製品は関税率を削減する。ただ、国内のチーズ供給量は12年度で国産4万7000トンに対し、輸入は23万8000トンと外国産が8割を占め、うち豪州産は9万7000トンと4割に上る。このため、今回設定を決めた輸入枠は「国内酪農業への影響は少ない」(農水省幹部)とされる。
しかし、チーズの消費量は伸びており、12年度は前年度比7%増に上る成長分野だ。農家が牛乳などからチーズへのシフトを進める中、日豪EPAが国産チーズの生産拡大にブレーキをかけてしまう恐れもある。
政府は、今回のEPA合意で、「国内畜産業に与える影響はほとんどない」と判断しており、新たな国内対策は行わない方針だが、農家は将来への不安を募らせる。北海道士幌町でホルスタインの肉用牛1700頭を飼育する「士幌北牧場」を経営する鎌田尚吾さん(43)は「豪州産牛肉の関税が下がれば影響は即座に出る」と沈痛な声を上げた。
一方、外食産業やスーパーは歓迎している。牛丼チェーン「すき家」を運営するゼンショーホールディングス(HD)は、04年9月から豪州産を導入し、現在も米国産と交ぜて使用している。すき家は消費増税を機に節約志向が強まるとみて、4月1日から牛丼(並盛り)の価格を10円引き下げ270円としたばかり。「値下げ効果」で客数が伸びないと収益を圧迫するだけに「仕入れ価格低下のメリットはある」と話す。
豪州産を使っていない吉野家は「当社への影響はほとんどない」と冷ややかだ。牛海綿状脳症(BSE)問題で、他社が豪州産などに切り替える中、吉野家は米国産にこだわり、復活が遅れた経緯がある。同社は消費増税に合わせ「価格より品質」を打ち出し、牛丼並盛りを20円引き上げて300円とした。豪州産より米国産の関税を引き下げてほしいというのが本音のようだ。
イオンは輸入牛肉のほとんどを「タスマニア産」など豪州産が占める。「品ぞろえが豊富で人気がある」といい、価格低下が進めば「オージービーフ人気」はさらに高まる可能性もある。
(毎日新聞より)